魔神の威圧感はとどまることを知らずみるみるうちに増していく。魔神の背後には後輪が現れ、その目は白く輝いていた。できることならば、今すぐにでもコート外に逃げ出したい。疼く腰が俺の逃走心を奮い立たせる。だが、足がすくんで動けないのだ。リクヤンが何か実況しているのがわかるが、内容が入ってこない。それほどまでの威圧感に、俺の意識は朦朧とし始めていた。
「鬱陶しいんだよ。」
唐突な怒号に俺の意識が引き戻された。どうやら、魔神の威圧感すらもあつくの前では無力であるようだ。まさか、あつくは魔神にボールを投げようとしているのか。馬鹿かあつく。お前は馬鹿か。言葉を発しようにも威圧感のせいで全く声が出ない。小松菜と星太もあつくを止めようとしているのだろうが、彼らもまた竦んで動けないようだ。俺たちはこれからどうなってしまうのか。あつくの手からボールが飛んでいくのを、俺は半泣きで見つめていた。
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