当然のごとく、見学が終われば岸壁まで歩き、端艇を漕ぎ日本丸へ帰船する。俺は基地を出てしばらく、その現実を受け入れられなかった。往路ですでに60パーセントほどの体力を使い、残りのほとんどを基地で消費してしまったからだ。しかも大量に血を失ってしまったために、端艇まで歩ききれるかどうかも分からない。
今にも途切れそうな意識の中、ふと目をあげると、そこにはねぶた祭りの準備をしている人たちの姿が映った。その近くには、浴衣を着た女性もいた。俺は細い目を見開いた。世の中にはこんなに美しい女性もいるのか。目が癒されるのとともに、体力も癒されるのを感じた。その次の一歩は、力強くコンクリートを踏みしめていた。彼女が欲しい。改めてそう思った俺の鼻の下には、一筋の赤いラインがあった。
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