広告収入

2017/11/03

PassagePlan 27 エピローグ

 気がつけば、俺は家の前にいた。たった1ヶ月しか乗船していなかったはずなのに、5年ぶりくらいに帰ってきたような感覚がする。大きな荷物を置き、俺は玄関のドアノブに手をかける。しかしドアは開かなかった。どうやら鍵が閉まっていたようだ。俺は慌てて大きなカバンを開き、家の鍵を探す。だが、その努力は水の泡となった。俺が鍵を発掘したのと同時に、扉が開かれたのだ。扉の向こうには母が立っていた。腰スケ、お帰りなさい。母は優しい笑顔で、俺に声をかけた。ただいま、ママ。俺はそう言い、母の胸に飛び込んだ。
 腰が痛い。就寝前はこの一言に限る。俺は、腰に負担の少ない低反発マットレスに横になり、目を閉じる。そして確信した。日本丸マジックは実在する。完全に隔離された空間。洗濯だって自分でしなければならない。いつも誰かといたはずなのに、なんとなく感じていた寂しさ。一体これはなんだったのか。日本丸マジックは乗船中に起きるものではないのだ。下船後に起こるのだ。いつも愛されていたことを、家族を愛していたことを、家に帰ってきて初めて思い出す。これが俺の叩き出した答えだ。
 わざわざ乗船に出会いを求めるなんて間違っていたのだ。愛は初めからここにあった。最後に俺は呟いた。ママ、大好きだよ。
Fin.

※ この物語は実際の団体・人物とは2割程度しか関係ありません。
  明日からは新小説「斉藤さんは腰が痛い」をお送りします。(しません)。

0 件のコメント:

コメントを投稿